天体観測用ライト、ビクセンSG-L01をキャンプ目線で使ってみた

02　世界一の暗さを追究天体観測用ライト

佐久間: SAMさんにとって、思い入れのあるキャンプ道具ってどんなものですか？
SAM: 自分にとっての最大のキャンプ道具っていうのは、車なんだよね。キャンプへ行く時のベースは必ず車なわけだから。最大のキャンプ道具であり、最高の相棒。
これがあるからキャンプは始まりも終わりも作れるの。

佐久間: オートキャンプですね。
SAM: 自分の車がキャンプサイトにあって、近くにいてくれると楽しいし、嬉しいよね。キャンプサイトに自分の車が入ると、キャンプサイトが完成したことになる。

あとは、コレだね。

佐久間: ヘッデン・・・ですか？Vixenモデル？！
SAM: そう。これは今いるVixenで、僕が企画して開発に携わった「SG-L01」という製品。一言でいうと「世界一暗いライト」を追究したものなんだ。
佐久間: ライトなのに・・・星を観るためってことですかね？
SAM: まずはそれが大事なところで。天文の人たちって赤いライトを使うんだよね。
理由は目を眩惑させないためなんだけれども、それを実現している市販品ってなかったんだよ。

佐久間: へー！意外ですね。
SAM: あと、思ったのが、みんなヘッデンをキャンプで使うでしょ？アレって車の上向きライトみたいで眩しくない？って。
佐久間: たしかに、めちゃくちゃ眩しいライトとかありますよね。
SAM: 山に登るんだったら道を照らすから必要なのかもしれないけれども、オートキャンプでそれほどの明かりが必要なのかなって。
しかも、それって目の高さにあるから眩しいんでしょ？！
だったら首から下げられるようにすればいいんじゃないのかなって思ったんだよ。

佐久間: たしかに！！！だからストラップがちょっと長いんですね。
SAM: そう。これ、長さを調節すればヘッデンにもなるようにして、首掛けにも、ヘッデンにもできるようにしたの。
ボタンを2回押すと黄色いライトにしたのも、白い光は目に強いからなんだよね。
あと、この「世界一暗いライト」の特徴は、一番暗いところから、明るくなっていくんだよね。
佐久間: あ、普通逆ですよね。
SAM: そうそう、普通は明るい→暗いになるよね。
つまり、これは明るくさせるためのライトではなくて、最小の暗い状態でもいいじゃんっていう。必要になったら明るくすればいいんじゃないって。
佐久間: 逆転の発想。

SAM: しかも、このライトの特徴は、一番暗い状態にしていると1週間つけっぱなしでも電池がなくならないの。なんと、この明るさって0.4lm（ルーメン）なんだよ。
佐久間: え！！！！！そんなもんなんですか！
SAM: そう！みんな100lmとか200lmとかの明かりで使っているけれども、そんなに必要ないんじゃないって思うんだよね。
私はこれをキャンプのときにも使っているんだけども、これで全然十分なんだよね。
佐久間: たしかに、オートキャンプだったらこれで十分ですよね。

SAM: そうそう。これくらいであれば、周りのひとが眩しいってことはないし、洗い物とかも十分できるし。料理だって、距離が近ければ見えるしね。
天体用で作りながらも、実はキャンプでも使えるっていうヘッドライトなんだよ。
佐久間: 結局首から下げてる人もたくさんいますよね。
SAM: そうなんだよ。可動域も広いし、ストラップを短くすればヘッデンにもできるし。
寝る時はネックレスを外すようにとって。それにさっき言ったみたいに電池持ちがいいからテント内の常夜灯としても使えるからね。
佐久間: これ“で”いいし、これ“が”いいですね。まさに。

ニュータイプのライト、行きます

SAM: 開発時は結構大変で、ライトって明るく作るのが普通じゃん？暗くすればするほど難しいみたいで、かなり時間かかったんだよ。
それでもなんとか作り出すことができたのも、「キャンプの夜の価値」ってものが見えてきたからだよね。
佐久間: SAMさんならではですね。
SAM: カラーを白赤にしたのも理由があって、すごく単純だけどガンダムっぽいから（笑）
他のブランドのものはスタイリッシュなものばっかだったから、逆をいったんだよ。
佐久間: ヘッデンて海外のモノが強いから見た目もそっちよりですもんね。
SAM: そうそうそう。だからあえての逆をいったんだよ。
土星とかも入れて、遊びココロをたくさん詰め込んでいて。
あと、わかる人にはわかるんだけども、実はこの辺のカラー、デザインはVixenが持っているキャンピングカーのものでもあるんだよね。
佐久間: Vixenマニアにしかわからないですね！（笑）

SAM: たぶん1万人に1人くらいにしか伝わらないけどね（笑）
でも、このカラー、デザインにしているのには意味があって、星とか夜空ってみんな黒とか青っていう色のイメージがついちゃってるじゃない？
それじゃぁみんなが思っている通りのイメージじゃんってことで、あえて暖色系の色を使っているんだよね。
佐久間: まったく逆ですもんね。
SAM: そう。だけど、土星の輪っかの中にはトナカイが歩いていて。Vixenってのはトナカイだから、そういう遊びココロで入れていたりもするんだよね。
佐久間: SAMさんだからこそできたモノですよね。値段っておいくらなんですか？
SAM: 売ってるところによって若干かわるんだけども、5,000円くらいかな。普通のヘッドライトよりもちょっと高いです。
けど、電池持ちとかを考えると結局はそんなに変わらないかなーっと。あとはお子さんにもこの明るさのものを渡すとちょうどいいんじゃないのかなって思うね。

佐久間: Vixenのヘッデン話で盛り上がりましたが、Vixenに入社することによって変わったことってありますか？
SAM: 自分の価値ってなんだろうって思った時に、私は一貫してほぼサラリーマンなんだよね。つまり、アウトドアで飯を食ってないの。
キャンプしている人ってほとんどがそうでしょ？普段は会社員で週末にキャンプしてって。そういう人たちの気持ちでずっと自分もいることができるっていう珍しい人間なのかなって。この立場は貫きたいなって思うの。
佐久間: たしかに。ほとんどの人は週末や連休でキャンプを楽しむ人達ですもんね。
SAM: 僕はそこがベースなんだよね。
では、なぜVixenだったのかってところにはなるんだけど、当時色々と迷ってた時期に、自分の師匠でもある木村東吉さんからこんな話があって「SAMさん、人間死ぬ時に後悔するのはなんだか知ってるか？人間はやったことに後悔するのではなくて、やらなかったことに後悔するんだぞ」って言われての。
今まで文系的な生き方をしてきたけど、ここでサイエンスに挑戦してみようって。
佐久間: 全然違う方向性への挑戦ですよね。

SAM: でも、星空ってことは自然科学じゃん？ってことはアウトドアだ！って気づいて。
アウトドアを自然科学でみるってここまでは考えたこともなかったけれども、それができたら世界が変わるんじゃない？って思ったんだ。
佐久間: その星空への挑戦の中で、SAMさんご自身が今、何か伝えたい思いとかってありますか？
SAM: 一言でいうと「キャンプで過ごす夜の価値」に目覚めたんだよね。